尿路ケアのフードを数字で選ぼうとすると、マグネシウムの壁にぶつかる
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結論から
ミネラル3項目について、ドライフードの公表値を集めた結果です。
| 項目 | 主食 | 療法食 |
|---|---|---|
| 灰分 | 8.90%(4.60〜10.70)/92商品 | 8.00%(4.00〜10.60)/62商品 |
| マグネシウム | 0.10%(0.01〜0.13)/33商品 | 0.08%(0.02〜0.12)/31商品 |
| ナトリウム | 0.36%(0.12〜0.70)/14商品 | 0.40%(0.24〜1.39)/24商品 |
括弧内は最小〜最大、そのあとが商品数です。
マグネシウムの幅の狭さに注目してください。主食で0.01〜0.13%、療法食で0.02〜0.12%。中央値の差も0.02ポイントしかありません。
この数字だけを見て「マグネシウムの少ないフード」を選ぶことに、どれだけ意味があるのか。そこを正直に書きます。
マグネシウムで選ぶのは思ったほど効かない
尿路結石の話でマグネシウムが必ず出てくるのは、ストルバイト結石がリン酸アンモニウムマグネシウムという物質でできているからです。材料が減れば石ができにくい、という理屈は分かりやすい。
ただ、実際の商品の幅は上のとおり0.01〜0.13%です。 そもそも各社が既に低く抑えているので、商品を替えたときに動く量が小さい。
それに、ストルバイト結石ができるかどうかを大きく左右するのはマグネシウムの量よりも尿のpHだとされています。尿路ケアをうたうフードが実際に調整しているのも主にここです。そしてpHの目標値はパッケージの成分表には書かれません。
つまり成分表の数字で尿路ケアのフードを選び分けることは、ほぼできない というのが実際のところです。
結石には種類があり、対策が逆になる
もうひとつ、数字で決められない理由があります。
猫に多い結石は主にストルバイトとシュウ酸カルシウムの2種類で、 できやすい尿の条件が反対向きです。ストルバイトはアルカリ性の尿で、シュウ酸カルシウムは酸性寄りの尿でできやすいとされます。
片方に合わせて尿を酸性に傾けるフードを、もう片方の猫に与えたらどうなるか。想像はつくと思います。
どちらの結石なのかは、尿検査やレントゲンでなければ分かりません。 症状も見た目も似ています。ここが「自己判断で療法食を始めない」と繰り返し書かれる理由です。
実際、前の記事で書いたとおり、尿路用の療法食はリンの中央値が0.93%と主食より高いという結果も出ています。腎臓に不安のある猫に良かれと思って尿路ケアのフードを与えると、リンの面では逆方向に進むことになります。
ナトリウムの数字はほとんど揃っていない
ナトリウムを公表しているのは、ドライの主食でわずか14商品でした。療法食でも24商品です。全体から見れば1割にも届きません。
しかも療法食の幅が0.24〜1.39%と大きい。尿量を増やす目的で意図的にナトリウムを高めに設計した商品が含まれているためです。これも「低いほうが良い」と単純に読める数字ではありません。
心臓や腎臓の状態によってナトリウムの扱いは変わります。数字を見比べる前に、まず主治医に確認するべき項目です。
では灰分は何に使えるか
灰分だけは92商品と公表率が高く、比較に使える数少ないミネラル指標です。
灰分はミネラル分の総量なので、内訳は分かりません。それでも「灰分10%超のフードはミネラル全体が多め」という大まかな仕分けには使えます。
主食の中央値8.90%を基準に、明らかに高い商品を候補から外す。その程度の粗いふるいとして使うのが、実態に合った使い方だと思います。
まとめ
- マグネシウムの公表は260商品中73件。しかも幅が0.01〜0.13%と狭い
- 尿路ケアで効いているのは主に尿のpH。成分表には書かれない
- 結石は種類によって対策が逆向き。検査なしでは判断できない
- ナトリウムは公表率が低く、療法食では意図的に高い商品もある
- 灰分は総量として粗いふるいに使える
数字で選べる領域とそうでない領域があります。リンやタンパク質はトップページで並べ替えて絞り込めますが、尿路ケアはその外側にある、というのがこの記事の結論です。